愛しい人の唇が離れるのと

同時に聞こえる言葉。

「ごめん・・・すみれ」

「イオリ、何を謝るの?
 
 どうして、泣いてるの?」

菫は起き上がり、ソファーに
座ったまま、瞳に涙を潤ませる
庵を、強く抱き寄せた。
 
菫の耳元で囁く、庵の声

「俺は、罪を犯し
 また、お前の前から
 いなくなる
 ・・・・・・
 俺は、お前の願い
 何ひとつ
 叶えてやることができない」

庵の頬を、一粒の涙が流れた。

「ねぇ聞いて、イオリ
 あなたは、ちゃんと
 私の一番の願いを
 叶えてくれてるよ
   
 そう、私はずっと願っていた
 あなたに
 生きていてほしいと・・・
 あなたは、生きていてくれた
 それだけで、もう十分だよ」

庵は菫を、強く、強く

抱きしめた。