飴色蝶 *Ⅱ*

「カナメ、今の話全て
 聞こえているんだろう?」

「はい、すみません」

要は庵の決心を知り

心が震えた。

そして、もう何を言っても
その考えを、彼が曲げる事は
無いと、要は承知していた。

「カナメ、今の話は他言無用だ
 墓まで持っていけ
 分かったな」

「承知しています、これから
 どうされますか?」

「サイレンの音が、もう
 そこまで聞こえている
 
 俺はこのまま、この場所に
 残り、サツに連行される
 
 カナメ、お前はアラタを
 連れて逃げろ」

「それでは
 もうスミレさんには・・・」

要に向けられた庵の瞳は
ずっと遠くを見つめていた。

「ああ、すみれには
 逢わないで行く
 カナメ、すみれに
 伝えてくれ
 
 俺の事は忘れてくれと」