痛さに顔を歪める庵の元へ行き
彼を支えたい。
  
要の足が一歩、庵へと動く。

「カナメ、来るな
 誰一人、ここへ
 踏み込んで来るんじゃない」

庵は、血で赤く染まった手で
追い払う。

要は、一歩出した足を元に戻す

そして、庵に問いかけた。

「親父、怪我は?」

「今回も運よく、掠っただけさ
 心配は無い
 ここに集まっている皆に言う
 一度しか言わない
 よく聞くんだ
 会澤組長の死を持って
 今回の抗争は終わった」

親分の死を、目の当たりにした
会澤組の執行部の面々
構成員達の荒立った気持ちが
そんな言葉で
『はい、そうですか』と
治まるはずは無く
 
次々に、不満な声を漏らして
ざわめき出す。

「静まれ、静まるんだ」

要の声に、場内は静まる。