飴色蝶 *Ⅱ*

「すみれ
 
 最後に口づけしてくれ」

震える菫の唇が、そっと
庵の唇に触れる。

口づけを交わす二人。

菫の唇が、庵から離れる。

これが最後だと

見詰め合う二人。
 
「ホソヤ、頼む
 すみれを俺から離して
 部屋の外へ連れ出してくれ」

「・・・イオリ
 いや、嫌だよ、イオリ」

庵の言葉を受けて、新は
菫の腕を掴む。

「いや、離して
 私に触らないで」

「すみれ、お前には
 生きていて欲しい
 俺の為に、お願いだ」

庵の頬に、一粒の涙が流れた。

「分かったわ

 ・・・イオリ聞こえる?」

「ああ」

菫が、庵の耳元に微かな声で
囁くと
 
庵の瞳に、涙が溢れて流れた。