「遠い昔の話だ
 ・・・・・・
 俺は、一人の女に出会った
 
 その女の冷めた瞳は、宿敵の
 イチヤに瓜二つ見れば見る程
 彼女は、イチヤに全てが
 似ていた
 違うのは、性別だけ・・・
 
 俺は俺の言うがままに、全て
 を曝け出す彼女を、この腕に
 抱いている時だけが、あの
 イチヤに勝っているような
 気がして、心が満ち足りた
 
 俺は、その女を何度も何度も
 求めた、しかしいつの間にか
 形勢は逆転、俺は彼女
 カヤコに夢中になり

 アラタとアラタの母親を捨て
 彼女と暮らした」
   
一夜に似た、花夜子という女性

「しかし幸せだったのも束の間
 俺は何も知らなかった
 
 似ているはずさ、二人は兄妹
 なのだから、そして俺は彼女
 が、誰かと電話で話す声を
 偶然に聞いてしまう
   
 それは、カヤコが兄である
 イチヤを、ずっと慕って
 いたという内容だった

 俺なんかよりも血の繋がった
 兄を・・・・・・カヤコが
 俺と男女の関係になったのは
 イチヤに相手にされない
 その、腹いせからさ」