その中を掻き分けて

扉の前に立つ、菫と新。

この、扉の向こうに

イオリがいる。
 
「カシラ、その女は・・・」

扉を開き、新が菫の手を強く
握り締めて現われた。

「カシラ、困ります
 彼女の拘束を解く事は・・」

傷ついた庵の姿を見た、菫は
新と繋ぐ手を解き、彼の傍へ
駆け寄る。

そして、両手を縛られた庵に
必死に抱きついた。

「イオリ、イオリ
 逢いに来ないでって
 言ったのに
 どうして来たりしたの・・
 
 無事で良かった」

「無事で良かった」
  
相手を想う気持ちが、言葉に
なり、二人の声は重なる。