「さあ、行きましょう」

「すみれ・・・行かないで」

菫を、このまま失ってしまう
かもしれないと悲愴な面持ちを
浮かべる庵の瞳を見つめて
雪乃は、告げる。

「イオリさん、心配しないで
 貴方から、スミレを奪ったり
 しないから、スミレが落ち着
 いたら、私から連絡します
 
 それから今後の事をちゃんと
 二人で話し合ってください
 貴方が、スミレを裏切る
 ような事をしていない
 
 私もミキちゃんもそう思って
 います、何か理由があって
 貴方はあの女性と、この場所
 に居た
 
 本当は、スミレ本人だって
 分かっているはず、だけど
 あの状況を目撃したすぐ後で
 貴方を信じる事はできない」

雪乃に肩を抱かれながら
菫は車へ乗り込む。

運転席の幹生は、庵に、菫の事
は任せておけと、表情で訴え
頷いてみせた後、車は走り出す