飴色蝶 *Ⅱ*

「もう・・・
 無理だよ、イオリ
 今の私には、貴方を
 信じる事なんてできない
 貴方を信じようとすれば
 するほど、どんどん自分が
 惨めになっていく
 心が・・・壊れそう
 私は、貴方の裏切りを
 許せない」

庵の裏切りに嘆く菫

彼は、もう何も言えない。

雪乃は、助手席のドアを開け
車を降りた。
 
これ以上、妊娠している菫を
放ってはおけない。
 
そして、優しく菫に声をかけた

「スミレ、行こう」

雪乃の存在に驚いた庵の手が
菫から放れた。

その隙に、菫は雪乃の元へと
近寄り、彼女の腕を握り締めて
俯く。

「イオリさん
 今日は、もうこれで
 スミレを返してもらうわね
 彼女は今・・・」

雪乃が妊娠の事を、庵に伝えて
しまうような気がした菫は
彼女の腕を強く握る。

「ユキ、あの事は言わないで」