飴色蝶 *Ⅱ*

菫の言葉を受け、罪悪感に心を
支配された巴は、庵の傍を離れ
その場から走り去り、人込みに
紛れ、その姿はどこにも見えな
くなる。

「すみれ、顔をみせて」

庵の声が聞こえる。
 
菫から離れようとした、要の腕
にしがみ付く、彼女の手が
庵には見えた。

菫は、要の胸に顔を埋め
首を左右に振る。

「スミレさん、この件には
 ちゃんと理由があるんです
 親父の話を聞いて
 あげてくれませんか?」
 
「何も聞きたくない
 早くこの場所から離れたい」

庵はそっと要の腕を握り締める
菫の手に触れた後
 
今度は、彼女の両肩に両手を
置き、自分の方へと、菫を
無理やりに向かせようとした。

菫の肩が震えている

彼女は泣いている。

「すみれ」

「さわ・・・らないで」