飴色蝶 *Ⅱ*

そう願い続ける菫の姿は
庵からは見えない。

庵には、ただ要が誰かを女性を
一生懸命に抱きしめている姿
だけが見える。

その女性の足元を見た庵は
その靴に見覚えがある。

それは庵が、ずっと前に
菫に買ってあげた靴だった。

「カナメ・・・まさか」

菫を抱きしめたまま、要は
力強く言う。

「親父、彼女には一人で帰って
 もらってください、早く
 これ以上、スミレさんは
 この状況には耐えられない」

巴は、要が抱きしめている女性
が、庵の大切な人だと知り
彼とは何も無かった事を、菫に
伝えた方がいいような気がした

「あの、私達は・・・」

菫は、両手で耳を塞ぎ

頼りない声で呟く。

「聞きたくない」