飴色蝶 *Ⅱ*

雪乃と幹生からは、庵が女性と
一緒に並んで立つ姿が見えた。
 
二人は、そこがホテルの前だと
いう事に気がつく。

菫を心配して、車から出て
行こうとした雪乃の腕を掴み
幹生は首を振る。

「今は出て行かない方がいい
 少しここで見守っていよう」

要は、後ろを振り返る事が
できない。

菫を胸に抱きしめたまま
彼の動きは止まる。

庵が女性と一緒にホテルから
出てくる姿を見てしまった菫は
言葉が出ない。 

瞳から零れ落ちる涙を拭う事
無く、要の胸に頬を寄せて
瞳を閉じた。

これは、全て嘘であってほしい

・・・夢であってほしい。