飴色蝶 *Ⅱ*

庵は、隣に座る巴に言葉を
かけずに、ずっと黙ったまま
外を見つめる

車内に、重い空気が流れる。

車は、また走り出し
庵はずっと遠くを見つめる。

その横顔は、怒っているように
感じ取れた。

「イオリ、怒ってるの?」

「お前は自分の立場が今の現状
 が、分かっているのか?
 俺達は今、お前の父親と抗争
 の最中、先の見えない抗争劇
 に組員達も皆気が立っている
 
 こんな時に、もし、お前が
 会澤の娘だという事が
 分かれば、お前を利用しよう
 と考える者が組の中に
 出てくるかもしれない
 
 どうして、あんな場所にいた
 下手すると、お前・・・」

「だって・・・ 
 だって、あなたに
 逢いたかったんだもの
 危険かどうかなんて考えてる
 余裕、私には無かった
 
 ただ、あなたを守る事が
 できるなら、その為なら
 私は、この命だって
 差し出すわ」

巴の手が、庵の手に触れた。