飴色蝶 *Ⅱ*

そう言って、朱莉は鞄から
ハンカチを取り出し、涙を
拭いた後、菫の両手をとり
彼女は微笑んで言う。     

「スミレちゃん、おめでとう
 イオリったら
 喜んだでしょう?」

「イオリには、まだ
 話していません
 
 明日、病院へ診察に行って
 ちゃんと妊娠を確認してから
 彼には報告するつもりです」

「そうね、それがいいわ
 そうだ、病院へは
 私が付き添って行くわ
 スミレちゃん、一人だと
 心配だもの
 
 明日、午前中に迎えに
 来るわね」

もうこれ以上、彼女を傷つけて
はいけないような気がした。

もし、これが

反対の立場だったら・・・

彼女が庵の子供を身籠っていた
としたら、私は、その事実に
耐えられないだろう。