「すぐに、カナメを
 迎えに来させる
 用意をして待ってろ」

「うん」

「シュリの言う事を
 よく聞くんだぞ」

なかなか、この部屋を
出て行こうとしない
庵の胸に、菫は抱きつき言う。

「イオリ、私、子供じゃないよ
 心配しないで、大丈夫だから
 早く、迎えに来てね」

庵は、見上げた菫の頭を優しく
撫でた後

この部屋を、出て行った。

彼の足音が、遠ざかって行く。

まだ、小さく、微かに

聞こえる足音。

そして、とうとう

何も聞こえなくなってしまった

だけど、これは、別れではない

今度、彼の足音が聞こえた時は

私を迎えに来てくれた時。

私は、聞き逃さないように

耳を研ぎ澄まし
 
その足音を、ずっと探す。