その様子を見た店の客も何事もなかったかのように再び酒を楽しみはじめた。

ギュネイの顔には、疑念と安堵が入りまじったような表情が浮かんでいる。

「シュミナ・イドノ、その人の居場所を知りたい」

「俺は、もう情報屋の仕事はしない」

「…あなたと同じあの事件の関係者です」

それを聞いたギュネイの体はかすかにに震えていた。

「………本当か?」

「彼女は軍の情報生命工学の研究者でした」

彼は少し考えるように俯き、そして答える。

「時間をくれ」

「お願いします」

シオンはクレネカを肩にのせて店を出た。

「できるなら彼を巻き込みたくはなかった。
全てを忘れ新しい人生を歩んでいたというのに」

クレネカがシオンの肩で思い詰めたような声で言った。

「アノ人は、あの事件を忘れたわけじゃない。
そうでなければ協力を断ることもできたよ」

シオンは考えすぎだとクレネカに諭す。

「次はどうする?」

「ここからそれほど遠くないところに廃棄された研究所がある。そこに行って見ようと思う。彼女の手掛かりがあるかもしれない」

彼女は通りに停めてあったバイクで走りだす。