《イーシュアル》はシオンを追撃しようと狭い通路に入った。


その瞬間


バアァァアン


《イーシュアル》の背に装備されていた七十ミリ機関砲が爆発と共に吹き飛ぶ。

通路の上の壁の間に片手と両足の支えにし潜んでいたシオンの射撃が《イーシュアル》の七十ミリ機関砲のドラム型の弾層を貫いた。

イーシュアルは咄嗟に七十ミリ機関砲を体から分離させるが爆発の余波でエントランスに弾き出される。

シオンの体は通路の壁の挟間から爆風で舞い上がった。

そしてシオンは無音の着地。

銃の撃鉄を上げ、態勢を整えようとしている《イーシュアル》にゆっくりと狙いをつける。

その時のシオンの表情はどこか哀しげだった。

「貴様、ヨクモ!!!」

《イーシュアル》の名を持つ暗殺機械は怒声と共にシオンに向って突進をはじめた。

シオンは引き金を引いた。

銃口から放たれた白い爆光が《イーシュアル》の頭部を粉砕する。

頭部を失った《イーシュアル》の体は方向を見失いシオンから逸れて近くの壁に激突した。





「クレネカ、今、忙しい?」

シオンは爆風に飛ばされてきた小さい瓦礫に半身が埋まったクレネカに無表情で訪ねた。クレネカは、その間抜けな状況から抜け出そうと奮闘していたがやがて諦めたように言った。

「猫の手も借りたいぐらいさ」

シオンは微かに笑いながらクレネカを瓦礫の山から引っ張り出す。

「王というのは…あの機械のこと?」