「みなさーん。これからちょっと驚く様な事をしでかしますので、あたしらから離れて下さーい」
見事に周りにいた人はサササッと直ぐにどいた。
珍しい物を見るかの様に、めっちゃ見てくる人が大勢いる。
それが野次馬となったのか、遠くにいる人はジャンプしてまでここを見たり、小さい子なんかは、肩車までしてもらっている。
と、男が短剣をシャッ!という音と共に抜き出した。
勿論あたしは何も持っていない。
女性軍は当然叫び声をあげている。
「おいおい。ビビッて武器も出せねーのか?ん?」
「馬鹿ねー。あたしは素手でやるの。素手」
「…ッハ!なめられたもんだな。短剣を使う相手に素手とはな。…怪我しても保証はねぇぜ?」
「ゴタゴタ言ってねぇで早く来いやクズ」
あたしがチョイチョイ、と右手でやると、
「…っざけてんじゃねぇぞ小娘!!!」
「…ふん」
「……あ………ぐッ……………」
勝利のVサイン!!は心の中で。
「さ、返してもらおうか。…女に負けるなんてねー。これで、あんたで70人は男倒したかな」
「……か…は………」
「…おぅ、あったあった。すいませーん!!コレの持ち主の方いらっしゃいますかー?」
んぬ 帰ったかな?
「…ご迷惑お掛けいたしました」
「あ、コレの持ち主さんですね。ハイ!」
「有難う…御座います。………あ…!」
ガシッ
「……負けを認めないだなんて、男じゃないね。変なくっさーい息かけないでくれる?」
「…っる…せぇな…。これでもくらッ…………!!!」
男の動きが止まったその理由。
あたしが左肘で溝打ちを食らわしたからである。
何て弱い男なんだろう、と思った。
弱すぎて、逆に歯ごたえなんてものはなかった。
