街で君の唄を聞いた


「あ、まって」

「どした」

「歌い、たい」

「…何だ、お前唄好きなのか」

「うん 一曲だけ」

「ああ」


世界へにと同時に 君にも贈るよ。


♪ 君を追いかけては また消えてしまう
  どこに行くかも分からない君を
  いつも探し続けて
  光の粒となって消えていくよ
  大事にしていたものは
  全て消失してしまった
  私には何もない

  けど 君は最初で最後
  私に会いに来てくれたよ
  君を失うのが嫌で
  必死でしがみついた
  子供みたいに 泣きじゃくって
  そんな君は私に言葉を贈った
  “側にいなくても 絶対忘れない
  僕の一番大切な人へ”

  目が覚めたら もう既にいなかった
  でも しっかり覚えているよ
  自分を失いかけそうになった私を
  助けてくれて有難う

  最愛の人へ


「ごめん 重かっ…?ヴィーノ…?泣い、てる」

「…え…?俺、泣いてる?」

「うん。まだこれ以外にもあるよ。ちょっと重いじぇど、あたしは好きなやつ。今日はもう多分歌わないと思うけど」

「そうか」


ヴィーノは服の袖で乱暴に涙を拭うと、そそくさと魔法陣に移動した。


ヴィーノが 泣いた。



今更気づいたけど
めっちゃくちゃレアじゃん。


でも皆に言わないでおこう…。
あたしだけの秘密、といいたいところだけど、本当に言ってはいけない気がした。