街で君の唄を聞いた


何も映そうとしない。

見えているようで、見えていない。

どこをみているかなんて分かりっこないし、感情ナンテ分かるものではない。



―――空っぽ…。



本当にそう思った。

綺麗な箱に、綺麗にラッピングされているけど、残念ながら何もありません。ハズレ。
そういう感じだ。



「今は楽にしていればいいのに」

「無理だな。お前のそーゆー眼をされると、尚」

「…まあ、いつか」

「今だ。今話せ。肝心な時にいなくて、聞き逃したらどうすんだ。釘刺さったまんまで抜けねーよ」

「……宿に戻って話そうか」



目を伏せて彼は言った。

…そこまで哀しい笑顔にならなくても…。


――ギクシャクになるよりか、普通に話してた方がよかったか。

うわ、しくった。



「何してんだ、こんな所で」

「あ?…カヅム」

「さっきコルクを見かけたんだが、もしかしてお前等一緒に居たのか?」

「は!?もうあんなとこいるし!ちょい話があるからまた後で!」

「あ、おい」




っはー…追い付いた…。

自分で思うのもなんだけど、ホントに足早いな。
すぐ追いついた。

見失ったら、それはそれで困る。

だってまだここ全然知らんし!

迷ったらもう全て大迷宮だ。



…コルクが小さく見えるのは、気のせいなんだろうか。

全て小さく見える。