「奈津。」

呼ばれて、
ヒヤリと冷たい手が額に触れた。


私はぼんやりと目を開ける。


暗い室内。


廊下から零れてくる明かりで、
微かに視界に映る
マスターの顔。


「っっ!」


近すぎ!

声にならない悲鳴が、
喉の奥で反響した。


一気に血が上った頬を押さえて、
私は

「何?」

と、冷静さを装って聞く。


「お客さん。お前の絵を気に入ったらしい。」


言われて、私は瞬きをした。


寝ぼけた頭が
全然ついていかない。


お客さん?

絵を…気に入った?


「そいつは、また。」


呟いたら、
マスターはクスリと笑い声をもらした。


「熱も下がってるし、会ってみるか?」


言われて、私は頷いた。