何時もの椅子に座らされた私は、

マスターの出してくれた
ホットミルクに口をつけた。


喉にしみる。


これは、もしかしなくても
マズイかもしれない。


咳の出る風邪は、
致命的だ。


「それ飲んだら、帰って寝ろ。」


マスターは言った。


素っ気ない口調は、変わらない。


「返事は?」


言われて、私は


「はい。」


と、答えた。



この人は、
こんな人だったろうか。



まぁ、危うく店の前で凍死されるところだったわけだし。


怒ってるんだろう。


「ごめんなさい。」


だから、私は謝った。


自分が悪かったら、
謝るのは当然だ。


それなのに、
マスターは驚いた顔をした。


そして、何か考えるように目を伏せて、
そのまま、言った。



「来るなら、来るって言え。待ってるから。」