車のテールランプが見えなくなると、

私の視界は

黒に染まった。


何処までも続く、
闇の底に堕ちていくような錯覚に、
背中がひやりとした。


「アホらし。」


呟いて振り返れば、
マンションのエレベーターホールの明かりで、
少し視界が良くなった。


それでも私は、
慎重に足を進める。


足が、段差にぶつかって

少しよろけた。


これだけ慎重になっても
これだから嫌になる。