麻紀が放心している間に入学式は終了し、新入生が退場し始めていた。
教室に戻ると更に驚くべき事があった。
麻紀のクラスにあの男がいた。
教室の窓側の一番後ろ。
そこにさっき壇上で挨拶をしていた如月 可威がいたのだった。
「な、なんで!?」
クラス中の視線が麻紀に集まった。
麻紀は声に出していたことに気づいていなかった。
「あ…」
如月 可威も麻紀の存在に気づいたらしく、麻紀のほうをじっと見据えていた。
「あー、お前この前たまり場にいたよな…?」
如月 可威は確認するように麻紀に聞いた。
「あ、はい…」
内心なんでこの人がこのクラスにいるのか理解できなかった。
この学校は入学テストでクラス分けをしているから、同じレベルの人が同じ教室にいるのが当たり前。
このクラスは一応レベルは高いほうだった。
でも、一番上のレベルではない。
学年トップのこの人がこのクラスにいる意味が分からない。
「あん時は怖かったろ?あんまあそこには近づくなよ?」
麻紀が放心している間に如月 可威が目の前にいた。
(ん?なんか違和感…前より優しくない?来のせいかな…)
「好きであそこにいたわけじゃ…てか、なんか、前より優しくない?なんで学年トップのあなたがこのクラスにいるの?」
麻紀は気になっていたことを真っ先に聞いた。
「ん?学年トップだからって秀才軍の中に放り込まれたくないんだよ。だから無理言って少しクラス下げてもらった。」
如月 可威は麻紀の求めた回答を何の躊躇いもなく話した。
「そ、なんだ…如月君はなんでそんなに頭いいのにあんなとこにいるの…?」
麻紀は少し躊躇いながら聞いた。
「あ〜、成り行き」
簡単に一言で終わらせた。
「そか…」
なぜかそれ以上は聞いちゃいけないような気がして聞かなかった。
「てか、君付けで呼ぶのやめろ。可威でいい」
怒ることはせず、麻紀の呼び方が気に入らなかったらしかった。
「あ、でも…」
麻紀は躊躇した。
いくらなんでもまだ知り合ったばかりで呼び捨てにするのは躊躇いがあった。
「いいから。あとさ…お前、何て名前だっけ?」
そう言われ、前に自己紹介をしたの忘れられてると思った。