ドリーム・キャッチャー~はじめのいっぽ~

「明後日また来て。これ、合い鍵」


女が鍵を渡すと手を握ったまま軽くキスした。


そして女はヒールを響かせながら赤い車へ乗り込んだ。


車が走り去ると、口を手で力を入れてこする男子高校生。


すると高校生は下にいた見物客に気付いた。


「あれ?何やってんの?珍しいねっ!桜がこんな時間に学校にいるなんて」


とぼけ顔の嵐に桜と玲緒はげんなりとうなだれる。



これが、奈由岐 嵐(なゆきあらし)


身長182センチの細身で、顔は女顔の美形という容姿。


おまけに頭は常に学年トップなので、女子人気ナンバーワン。


でも中身はその容姿がもったいないくらい男らしくなく頼りない。


女はとっかえひっかえで、男子からはよく思われていない。



いつも陽気な脳天気男だ。



「何やってんのじゃねえよ。ちょっとは嫌悪感とかないのか」


「何で?向こうが勝手に何でもしてくれるんだもん。」


ちょっと怒ったように玲緒に言い返す。


悪気なんてあるわけないと、諦めて話を切り返す桜。


「今から部活の朝練?」


「ううん。新入生歓迎会のリハで集まるんだよ」


「あそう。…で、ちょっと時間ない?」