「ああ、最後のインターハイだからな。今年こそ絶対に行く」


「そっか。最後かあ…」

意気込む秀斗を真正面に見ながら、小さかった頃を思い出して懐かしさに浸る桜。


「去年は玲緒が怪我で棄権したんだっけ?」


入り口にいる嵐が余分なことを言いながら桜たちに近寄る。


「そうだよっ。三回戦目で捻挫して、テーピングで試合してたら悪化して入院」


「今年は玲緒もいるし、良いメンバー揃ったし、行けるな」


秀斗はそう言うと、ボールを軽くバウンドさせながら奥の倉庫へ入っていった。


「一回締めねえといかんし、先出てるか」


「うん」


秀斗を置いて4人で先に校門へ向かうその間、会話が途切れていた。


そのとき桜は初めて気が付いた。


空気が重い…。


玲緒は至って普通だが、何か察してるようだった。


原因は、嵐と翼だった。


気が付けばさっきから一言も会話しないし、一定に保たれた距離は縮まらない。



こうやって5人横に並んでも、一年前と少し距離感を感じた。





それでも、それを吹き飛ばすように、あの言葉を大きく叫んだ―…。