チャイムの鳴る中、教室は騒然としていた。
入学式から1ヶ月、今ではすっかりクラスにもグループが出来て皆が勉強に恋に燃えていた。

「おーい、静かにせんか!」

担任の矢倉が声をあげてざわつく生徒を鎮める。
歳は50代前半くらいだろう、短かく刈った短髪に首にブラ下げたホイッスル。
筋肉質な体で典型的な体育教師だ。

渋々と教室に散らばっていた生徒は各自の席に着く。
すっかり皆が席に着いた時、矢倉が沈黙の中、一番後ろの席に無言で詰め寄る。

「どうしたんですか?先生」

矢倉が見据える少年が不機嫌そうに低い声で呟く。

髪こそ黒いものの繁華街にうろつくホストのような長髪、アクセサリーやピアスをつけたおおよそ真面目とは言い難い生徒だ。

よく見れば学ランも短く白いベルトがあらわになっている。