「ねー、ちょっと聞いてよぉ」
私が売店からジュースとパンを買って帰って来た途端、親友の中島 美香が話し掛けて来た。
美香がこういう話し方をする時ってだいたいが面倒事。
「なによ、私今から食事で忙しいんだから」
冷たく言い放ってみたりする。
当然彼女は食い下がってくる。
上目遣いでちょっと目を潤ませたりして。
「えーお願いっ。私、沙雪が頼りなのっ」
「もーなんなの?早く言ってよ」
私は寺田 沙雪。
高校1年の16歳。美香とは幼なじみで、幼稚園から一緒だ。
美香は腰まである長いサラサラの高校に入るときに染めた茶髪と薄い化粧、整った大人っぽい顔立ちからクラスの男子に結構人気だ。
それに比べ私は、肩まである黒髪をポニーテールにして結い、顔も普通くらいだから美香とは対象的とも言えるだろう。
「やっりい。あのね、最近好きな人が出来たんだけど…」
美香が話し出した。
予想通りの恋愛話だ。
「またー?あんた、佐藤君が好きだったんじゃないの」
「んーそぅなんだけとぉ。なんか覚めちゃって」
「覚めたってあんたね…」
美香は好きな男子をコロコロ変える。
彼女が彼氏を作れない理由はそこにあるだろう。
私は別問題。というか必要無いのだけれど。
「だって彼、エースじゃ無いんだよ?惹かれなかったんだもん」
「あのねぇ…で?新しい恋のお相手は?」
呆れて物も言えないとはこのことだ。
「よくぞ聞いてくれたわねっ!」
美香は突然大声を出した。
私はクリ-ムパンの袋を開けながら話の続きを促した。そろそろ空腹の限界だ。