家族や友達と離れるのは少し悲しいけど、やっぱり嬉しさの方が勝っていた。



引っ越し屋のトラックはもうあたしの新居に着いていることだろう。

そう思うとワクワクして黙っていられない。


「あ〜、超楽しみ!」

あたしはタクシーの中ではしゃいでいた。

「今日から一人暮らしなんだろ?」

タクシーの運転手の優しそうなおじさんがあたしに言ってきた。

「はい!そうなんです!……でもよくわかりましたね!あたしが一人暮らし始めるって」

「そりゃあ分かるよ。この時期、そんなにいきいきした顔して、大荷物持った大学生くらいの子は大抵そうだよ。まあわたしの長年の勘ってのもあるけどね」

「確かにその通りですね」

「まあ、くれぐれも体には気をつけるんだよ。野菜、しっかりとって」

お母さんみたいなことを言うおじさんがなぜだかおかしかった。

「分かってますって〜。立派なキッチンが付いてますもん。自炊します」

あたしはそう言って手をヒラヒラと降った。