倉本さんが頷いて書類に目を通し始めると、貝塚さんはあたしを見た。 「おや、どなたかと思ったら、お嬢様! ご無沙汰しております。 今日はどうなさったんですか?」 目を細めて懐かしそうに話しかけてきてくれた貝塚さんに、あたしは小声で聞いた。 「貝塚さん、ここの支店長って?」 すると、貝塚さんも小声で答えてくれた。 「え?倉本さんですが?」 それがどうした、といわんばかりに顔を覗き込まれ、あたしは眉を寄せた。