「ねえ、あたしの噂って?」 車が走り出すとすぐにあたしは倉本さんに聞いた。 さっき、倉本さんが言ってた『お噂はかねがね』っていうのが気になってたんだ。 だって、自分が知らないところで噂立てられてるって、なんか気分悪いし。 倉本さんは前を向いてハンドルを握ったまま答えた。 「ああ、さっきのですか。 いや、ほら……、4月から銀座支店にご長男の篤志(アツシ)さんがお勤めですよね。 で、社長にはもう一人お嬢さんがいらっしゃると聞いていたものですから」 「ふうん、それだけ?」