「あなた、横浜支店の人?」 あたしが問いかけると、その男はまっすぐあたしを見た。 「ええ、そうですが、あなたは?」 男の値踏みするような視線にあたしは一瞬たじろいだ。 なんか、へたに近寄ったら切られそうな鋭い目つき。 すると、あたしが答えるより先にママが言った。 「礼奈よ。うちの娘」 それを聞いた男は、合点がいったというように「ああ」と頷き、微笑んだ。 「あなたが。 お噂はかねがね伺っています」