婚約者☆未満


ガタンッ。


「きゃあっ!」


ひときわ強い風にあおられ、音を立ててゴンドラが揺れると、礼奈は小さな叫び声を上げた。

手はしっかりと手すりを握り締めている。


「怖いのか?」


「べ、べつにっ。
ただ、ちょっと揺れるなあと思っただけっ」


出た。

礼奈の『べつに』。

ったく、意地っ張りなやつめ。


俺はそっと立ち上がった。


「やだっ、伊織、なに立ってんの!
座ってよっ!」