「ね、これどお?」 店の前のワゴンにたたんであったTシャツを一枚胸に当てて聞いてきた。 「ああ、いいんじゃないか?」 「もうっ、伊織ってばどれでもみーんな『いいんじゃないか』ばっかり!」 「…………」 そう言われても、みんないいんじゃないかと思うんだから仕方ないだろ。 でも、反論してもケンカになるだけなのが目に見えてるから口には出さない。 この3週間で得た、礼奈とうまく付き合う方法。 礼奈はもう俺の意見は参考にしないことにしたらしく、鏡に自分を映して吟味しはじめた。