あたしが小さな声で呟くと、伊織はまたくすくすと笑った。 「珍しく素直だな」 「だって……」 こんなふうに優しくされたらこっちだって素直になるしかないじゃない。 伊織はあたしのあごを指先で持ち上げた。 伊織の整った顔が目の前にある。 あたしを見つめる伊織の瞳に、あたしが映っていた。 「伊織……」 「ん?」 息がかかりそうなくらいに伊織の顔が近くてドキドキした。 でも、あたし、まだ言ってない。 言わなくちゃ。