「嫌ならしなきゃいいさ」 へ? 結婚……しなくていいの? あたしがあっけにとられてると、伊織は言った。 「前にも言ったが、俺とおまえをくっつけたがってるのは、副社長と俺んとこのじいさんだ。 だが、今現在、大野もうちの実家も経営は至って順調だ。 俺たちが結婚しなきゃならない理由はどちらにもない」 「えっ、そうなの?」 あたし、てっきりうちが赤字で、あたしが倉本呉服にお嫁に行く代わりに援助してもらうとか、そんな事情があるんじゃないかと思ってた。 けど、違うんだ。