「あの……」 あたしがきょろきょろしていると、智代っちが声をかけてきた。 「あ、ごめん、なに?」 智代っちに視線を合わせると、智代っちは遠慮がちに言った。 「昨日、貝塚さんに聞きました。 礼奈さんと支店長は婚約なさってるそうで……」 「えっ!?」 いつの間にか、あたしとあいつはもう婚約したことになってるらしい。 「そのこと、貝塚さんは誰から聞いたか知ってる?」 「はい、副社長からお聞きになったようです」