「あなたは、それ、知ってたの?」
「ああ、まあな」
「いつから?」
「大野に来るちょっと前にじいさんに言われた」
「あなたは、そもそもなんでうちの支店長なんかしてるの?
倉本呉服の跡取りなんじゃないの?」
あたしの頭の中は疑問符だらけだった。
とにかく、一つずつ聞いていくしかない。
「俺は大学卒業後、今社長をしている親父の下で2年間、家業について学んだ。
で、去年の春、大野で修行して来いとうちを出された。
大野では、貝塚さんの下で1年間支店長の仕事を教え込まれ、今年は自分でやってみろ、と支店長をやらせてもらっている。
だが、俺が大野にいるのは来年度いっぱいだ。
おまえが高校を卒業したら、おまえを連れて帰って来いと言われている」


