おじいちゃんが社長だった頃、あたしがまだ小学校低学年の頃だったと思う。
ときどき、倉本呉服の社長さんっていう太ったおじいさんがうちに遊びに来ていた。
あたしはご挨拶だけさせられてすぐに応接間を追い出されたけど、『いい子だね』っていつもお小遣いをもらってた。
夏には、軽井沢の別荘にも招待されて行ったことがあったはず。
同じ年頃の友達もいなくて暇をもてあましてたあたしに、おじいさんがクレヨンと画用紙をくれたっけ。
似顔絵を描いてあげたら、『上手だ』って何度も褒められたのを覚えてる。
優しいおじいさんだった。


