「イタリアンがいい。 カジュアルなところで」 「わかった」 あんまりおしゃれ過ぎない店の方がいい。 こんなやつとデートみたいに思われるのは癪だもの。 伊織は駐車場に出ると、社用車ではない、ちょっとかっこいい車の助手席のドアを開けた。 男の人に車のドアを開けて乗せてもらうのなんて初めてで、ちょっとドキッとした。 昨日はそんなことしなかったくせに。 でもあたしは、そんなのはいつものことって顔で車に乗り込んだ。