【完】君色フォトグラフ

帽子を見つめながら、私は悩んでいた。


別に明日、柚さんに渡せばいい。




だけど・・・・・・。





帽子に書いてある和由君の名前。

あの時の笑顔がその名前に被るように浮かんでくる。


私はうんと頷くと、野球部の部室へと歩き出した。


今までの私なら絶対行かなかったと思う。

だけど、なぜだろう?

もし、これが和由君の優しさなら・・・もう一度見てみたいと思った。




和由君の笑顔を。




野球部の部室に近づくと、和由君が丁度部室から出てくるところだった。



ドキンドキン



どうしよう、なんだか緊張してきた。


「和由君」

ダメだ。

消え入りそうな声しか出ない。

絶対これじゃ聞こえない・・・・・・。


「大槻じゃん。何?」


「え?」


聞こえた・・・・・・?


私がもじもじしていると、和由君が近くにやってきた。


「・・・・・・もしかして帽子持ってきてくれた?」


「うん」


私が帽子を差し出すと、和由君はそれを受け取り、被った。