「あのっ!忘れ物です!」 意外と大きい声が出て、自分でもびっくりした。 真っ赤な顔を伏せて、ハンカチを両手で突き出して。 もう私…必死です。 彼が、振り返ったのがわかった。 ゆっくり顔をあげると、目を点にしている彼。 ああー変な子だと思われた!! もーヤダ帰りたいー!! 思わず涙が出そうになった。でも。 「…ありがとう」 初めて彼を見た、あの日のように。 目の前の彼は優しく穏やかに笑っていた。