花とアイドル☆《完》

アイドルとしてじゃない。

ただの『本郷拓斗』を、もっと
知りたい。


そして――こんなふうにそっと
見守って。


お節介かもしれないけど、ちょこ
っとだけ、お手伝いしてみたり
して。


一生懸命な拓斗を、助けてあげ
られればいいのに……。



いつのまにか、花乃は服をたたむ
手を止めて、それをぎゅっと
握りしめてしまっていた。


なんだか、やけに切なくて――
胸が苦しい。



と、そのとき。



シーツのすれるかすかな音と
同時に――フワリとした優しい
声が、花乃の名を呼んだ。


「………花乃さん?」



―――――!!



花乃は弾かれたように振り返る。


いつのまにか、拓斗が目覚めて、
ベッドの上で上半身を起こして
いた。


「た、拓斗ク……」