花とアイドル☆《完》

いつかのように、上着を脱いだ
だけの状態で、シーツも被らず。


そして、ベッドの近くの床に、
てっぺんに2つのベルがついた
特大サイズの目覚まし時計が
横向きに倒れて転がっていた。


――さっきのは、あれが落ちた
音かぁ〜。


拓斗の右腕がサイドボードに
乗っているところからして、
彼の手が払い落としたとみて
間違いないだろう。


「……………」


何かとつっこみどころが多すぎて
、花乃はそのままドアを閉めて
引き返すのがためらわれた。


――もうすぐ夏とはいっても、
さすがにあれじゃ寒いよね……。


「はぅ、
ダメだ……ほっとけない」


――ちょっとだけ、おじゃま
します……。


心の中でそう断って、花乃は
物音をたてないように注意して、
室内に足を踏み入れた。