花とアイドル☆《完》

3階に上がって、拓斗の部屋に
目をやると。


ドアの隙間から、明かりが漏れて
いる。


――起きてたのかな?


でも、そういえば前にもこんな
ことがあったな、と花乃は思い
出していた。


いつだったか、拓斗に仮眠から
起こす役目を頼まれたときだ。


――そだ。

拓斗クン、疲れてると電気つけた
まま寝ちゃうんだよね……。


何かあったのか、寝ているのか。


部屋の中はシンとしているし、
ノックにも応答がないので、花乃
は思い切って小さくドアを開けて
みた。


隙間からそっと中を覗いて――、


「……なぁんだ……!」


花乃は、つい気の抜けた声を
出していた。


――よかったぁ、
何かあったんじゃなくて。


ドアの隙間から見えた、ベッドの
上で。


拓斗は、小さな寝息をたてて
眠っている。