花とアイドル☆《完》

でも、顔を見れば、遥の言った
ことや自分の気持ちを意識して、
勝手に鼓動が速くなる。


もう、自分では完全にセーブ不能
だった。


今夜も、拓斗が帰宅したとき。


花乃も愛香さんも自室に戻っては
いたが、まだ眠りにはついて
いなかったので、愛香さんは
階下に降りて、リビングで少し
拓斗と話をしているようだった。


普段なら、花乃も特に話すことが
なくても、『おかえりなさい』を
言うために降りていく。


でも、今夜は顔を合わせづらくて
、花乃は降りていくことができ
なかった。


今はもうそれから数時間たち、
愛香はもちろん、ひょっとしたら
拓斗も眠りについたかもしれない
、という時間帯。


花乃も、晴れない気分のまま
ベッドにもぐり込むしかない
かな、と立ち上がりかけたとき
――、


ガチャーン!!


金属製の大きな物音がして、
花乃は飛び上がった。