花とアイドル☆《完》

思い当たることが全くなくて腑に
落ちない拓斗は、頭を抱えたい
ような気分になってくる。


そんな様子をミラー越しに眺めて
いた奏は。


小さく咳ばらいすると、いつもの
冷静沈着な声に戻って、おもむろ
に話し出した。


「拓斗。

愛香さんの時代とは違う。

恋愛はご法度だなどと言うつもり
はないが……」


―――え?


「仕事をおろそかにすることと、
イメージダウンになるような
ことは決してするな」


サラリとそう言い切ると、もう
何事もなかったかのように運転を
続けている。


――敏腕マネージャーはなんでも
お見通し、か。


拓斗は降参したように背もたれに
ドサッと体をあずけ、


「りょーかい。約束するよ」


そう、はっきりと答えた。


――考えてても仕方ないか。

聞いてみるっきゃ、ないよな……。



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