花とアイドル☆《完》

遥は、そこで一度言葉を切った。


だがすぐに、拓斗の瞳を正面から
とらえて、


「拓斗。ボクは、お前の大切な
花乃さんにも、ひどいことを
した。

謝ってすむ話じゃないけど――
本当にゴメン」


そして遥は、花乃にも視線を
向けて、頭を下げようとした。


でも、花乃はそれを止めるように
大きく首を横に振る。


「ひどいことなんて、されて
ないよ。

拓斗クンも誤解しないでね?」


「花乃さん! それは……!」


食い下がる遥に、花乃は優しい
ほほ笑みを向け、


「もういいの。

遥クンが自分の気持ちをあたしに
ぶつけてくれてなかったら、
こんなふうに拓斗クンと話をする
機会もなかったかもしれない。

そう思うと、あれでよかったん
だよ」


ようやく、拓斗と遥、お互いの
気持ちが、相手に伝わった。