花とアイドル☆《完》

「遥、違うんだ。それは――!」


拓斗は立ち上がって、遥と正面
から向き合った。


遥の潤んだ瞳が、拓斗の姿を
映して揺らめく。


「わざと避けてたわけじゃない。

ただ――色々あって。

お前だけじゃなくて、昔からの
友達は、みんな会いづらくなって
た。

よそよそしくなってるのは分かっ
てたけど……。

どうしようもなかったんだ」


「色々……? どうして?」


遥の問いに、拓斗はしばし目を
そらしてうつむく。


説明する言葉を、一生懸命探して
いるようだった。


やがて、拓斗は沈黙を破り、
ゆっくりと自分のことを話し
出した。


自分が身の上を隠して芸能活動を
していることで、回りに迷惑を
かけていると考えていたこと。


それが申し訳なくて、連絡を
もらっても、なかなか普通に
接することができなかったこと。