花とアイドル☆《完》

「い、いいよっ。

自分で歩ける!」


花乃は真っ赤になって手を横に
振ったが、


「何言ってんの。

そんなに腫れててまともに歩ける
わけないじゃん」


「でも――恥ずかしいし……」


蚊の鳴くような声で答えた花乃
だったが。


拓斗は呆れたようにため息を
ひとつつくと、有無を言わさぬ
口調でキッパリと言い切った。


「そんなこと言ってる場合じゃ
ないだろ。

ホラ、おとなしくおぶさる!」


「……ハ、ハイ」


結局、その勢いに負けて、花乃は
ためらいながらも拓斗の背中に
身を預けた。


すぐに拓斗の力強い腕が花乃の
体をしっかりと固定して、立ち
上がる。


「んじゃ、行くよ?」


一声かけてから、拓斗はゆっくり
と歩き出した。


「……………」