花とアイドル☆《完》

「『仕方ない』のも、オレ主体
じゃん?

実はさ、この辺りの人達にも――」


言って、拓斗は首をぐるっと
動かして、周囲の家々を示した。


「父さんから、口止め令みたいの
が回ってんだ」


「え?」


「オレの素性、世間には内緒で
しょ? だから。

近所じゃなくても、中学のときの
友達とかにも。

父さん、いちおー実力者だから、
みんな協力してくれてるけどさ。

みんなにしてみりゃ、いい迷惑
だよな」


「……………」


「それに、母さんだって――。

あの人、子供の頃からずっと、
将来の夢は『普通のお嫁さん』
だった人でさ。

まあ、会社社長に嫁いだ時点で
どーかって気もするけど。